CFO 会議と”行動アジェンダ”

コンサルタントとして独立した直後、最初の仕事はある日系グローバル企業の CFO 会議の企画立案であった。海外子会社からCFO を日本に招へいし、会議を通じて連携をはかる計画である。

会議の目的は各国 CFO と本社財務部門との連携強化、CFO 同士の「顔合わせと関係作り」、「横の連携構築」といった比較的ソフトなものだが、一方でクライアントは海外事業が急速に拡大し海外子会社を次々と設立したため様々な面で子会社の財務管理が追いつかない事態に悩んでいた。

会議を主催する本社財務部は各国の管理レベルをグル-プの標準的な水準に改善する必要性を感じており、各子会社の業務改善のリード役と期待される 各国のCFO を本社に集め意識合わせをするという狙いがあった。

当事務所がコンサルティングの依頼を受けた時点では会議の方向性等まだ漠然としたアイデア段階、しかも予算も限られ実質半日の短い会議となりそうな様子であった。

半日での意識合わせではやれることは限られている事から次のような議事進行を提案した:

①各国 CFO に理解してもらいたい事・期待する事を本社マネージャーがプレゼン
②各国が直面する課題を CFO が発表し参加者で討議
③上記を踏まえて本社と各国で今後の改革のための行動アジェンダを作成し合意。

この方法によりグループ方針と各国の課題の共有を(本社からの一方的な伝令ではなく)双方向で行える事、改革の方向性におおまかなレベルではあるが合意する事が出来ると考えた。

“アジェンダ”という形式を提案したのは、会議の時間が短い中で、各国の優先課題と行動について、少なくとも方向性を簡潔にまとめられると考えたからである。

アジェンダという言葉は、本来は会議で話し合いたいテーマを参加者に事前に伝える「討議(予定)項目リスト」であるが、会議に限らずビジネスの色々な場面で漠然とした方向感を示したい時などに利用することが出来る。

筆者はアジェンダ利用の例をアメリカの経営事例に関する本の中で目にした。その中でアパレル大手のギャップ社に就任したCEO が掲げた「戦略アジェンダ」の例が紹介されている。以下抜粋する。

“戦略アジェンダは(戦略の)おおまかな方向性と課題を定めたものである。アジェンダには、顧客志向を強めること、ギャップのコア顧客層にターゲットを絞り込むこと、社員全員が会社の目標を意識すること、ロジスティクスと在庫管理システムの改善を通じコスト削減とキャッシュフロー改善を実現すること、そして会社を働き甲斐のある場所にすることが謳われた。
重点課題がはっきり示されているが、こまかすぎはしないので、各部署やチームが自分なりのやり方で進める余地が残されている-この点がアジェンダの特徴といえる。(CEO 最高経営責任者、トーマス・ネフ、ジェームス・シリトン)”

アジェンダを当事者同士で合意する事でおおまかな意識合わせが出来る。その後は具体的なアクションプラン策定となるが、アジェンダの方向性と整合することを確保すれば、細かい点は各国の自主性に委ねることが可能なのである。

さて、肝心の会議は、
“当日の CFO 会議では参加者の活発な議論が行われ、改革の方向が行動アジェンダにまとめられた”

となるはずであったが、実はこの案件、当方の提案が了承され資料一式を納品したところで会議そのものが延期になってしまった。

その後、しばらくしてコロナ禍のため渡航自粛となり、以後未だ日の目を見ていない。

計画書と資料、スケジュール全て完成しており既に準備は出来ている。

海外に限らず国内子会社との方向感のズレや、業務改善に向けた意識合わせなどに課題を感じている方はぜひお問い合わせいただけると嬉しい。

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